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「すると、私たち、やっぱり助かったのですか」
「そうなのよ、たすかったのよ、奇蹟よ」
華やいだ返事だ。さっきまで一緒にいた女監督だった。
「運が強いんだよ、悪運がね」
今度はカメラマンの弾んだ声が聞こえた。
医者の背後で大勢のひとたちが作業をしていた。
「あのひとたちは?」
「下山組のひとたちよ。雪崩で沢を下れなくて、帰ってきたのよ。けっこう雪かぶっちゃったから、みなで破れたところ、補修してるのよ」
「ぼくも手伝います」
「だめだめ!」
立ち上がろうとする若者を医者が制した。
「君はケガをしているから、安心して、みなにまかせておきなさい」
いわれて若者は気がついた。右脚に板切れを添え、上から引き裂いた白い布でぐるぐる巻きにしてある。膝を曲げようとしたが曲がらなかった。不思議に痛みはなかった。
「骨折?……」
「そうです、右大腿骨がポキリとね」
ガクリと肩を落とし若者は、そのまま仰向けに寝ころんでしまった。
一時おいて医者が事の経緯を説明し始めた。
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