第一章 白い雪

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「すると、私たち、やっぱり助かったのですか」 「そうなのよ、たすかったのよ、奇蹟よ」  華やいだ返事だ。さっきまで一緒にいた女監督だった。 「運が強いんだよ、悪運がね」  今度はカメラマンの弾んだ声が聞こえた。  医者の背後で大勢のひとたちが作業をしていた。 「あのひとたちは?」 「下山組のひとたちよ。雪崩で沢を下れなくて、帰ってきたのよ。けっこう雪かぶっちゃったから、みなで破れたところ、補修してるのよ」 「ぼくも手伝います」 「だめだめ!」 立ち上がろうとする若者を医者が制した。 「君はケガをしているから、安心して、みなにまかせておきなさい」  いわれて若者は気がついた。右脚に板切れを添え、上から引き裂いた白い布でぐるぐる巻きにしてある。膝を曲げようとしたが曲がらなかった。不思議に痛みはなかった。 「骨折?……」 「そうです、右大腿骨がポキリとね」  ガクリと肩を落とし若者は、そのまま仰向けに寝ころんでしまった。  一時おいて医者が事の経緯を説明し始めた。              
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