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「またフブキだしましたよ」
夕刻近く、窓超しの白い世界を見つめて若い商社マンが呟いた。
「あと四日は続きそうね」
女監督が退屈そうにゴロリと床板を鳴らして寝ころんだ。手帳になにかを書き込みながら、開業医が相槌を打った。
「そのようですな、先程の予報でもそういってましたから」
わきにピッケルが一本置いてある。握り部は木製で黒光りしていた。そこから尖った先端にかけ、一匹の白い蛇がのびやかな姿態で絡みついている。
女監督が身を起こしていった。
「あら、見事な彫り物じゃない」
「ああ、これね」
ピッケルをかざして医者が答えた。
「白銀で彫ったものを溶接してありましてね。父の形見なんですよ」
医者は説明した。登山家だった父親は浜坂の出で、登山仲間の友人に酒問屋の跡継ぎがいた。その友人が結婚して実家を継ぎ長男を得て数年たった頃、酒蔵に一匹の白蛇が住み着いた。みな気味悪がったが、友人は、蔵のお守りじゃ、といって放っておいた。
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