骨箱

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 …そういえば、彼の骨は誰が抱いていただろうか。  何とか思い出そうとしても、涙で曇った曖昧な視界と自分の叫び声しか浮かんでこない。棺の前、ちらついた奴の笑顔だけが、まるで本当に見えたことのように鮮明に脳裏に焼き付いている。俺は泣きながら棺に拳を打ち付け、何人かの大人に取り押さえられた。  どうしてこの世の中には、こんなにも多くの死が溢れているのだろう。  今もきっと、誰かが誰かの骨を抱いている。誰かが、激しく死に憧れている。  死は強い引力。  俺だってきっと、あの夜、あのバス停での出来事さえ無ければ、遅かれ早かれ死を選んでいたはず。激しい死への憧れを止めることが出来ず、自ら命を絶っていたはず。  しかしあの時、俺は死の恐怖を鮮明に刻みつけられ、その結果、生きることしか出来ない低能な生き物に成り下がった。
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