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「たとえばこの本屋は、旅行ガイド本が充実してますね。国内だけじゃなくて海外の旅先も幅広く取り揃えてる」
「それがどうかしたか」
「海外旅行が好きな人は、高確率で外国の料理にも興味があるんですよ」
「あ。なるほど」
陽輔が感心したように頷いた。
「こっちの平台には、街歩きや話題のカフェ巡りなんかの本も並べてある」
出歩くのが好きで、食に関しても好奇心旺盛な読者層が思い浮かぶ。
「今久住さんが見ていたような、飲食店関係の専門誌も置いてある。客層にそういう職業の人が多いんでしょうね」
「いつも、そうやって仕事してるのか」
「そうですよ」
完全に仕事モードで頷いてから、はっと反省する。確かにこれでは仕事人間だと揶揄されても仕方がない。
「すみません。今日は仕事じゃなくて、デートの予行演習でしたよね」
陽輔を促して足早に書店を出る。
「いや、いつものあんたのペースでいいよ。その方が面白そうだから」
「面白そう、って」
「普段着のあんたと顔を合わせるのは、なんか新鮮だ、ってくらいの意味」
そう言われ、余計に複雑な気持ちで自分の私服を見下ろす。
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