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この手の提案は嫌がられそうだな、と思いながら、唯吹は敢えて虎の尾を踏む。
「女性受け?」
「ええ。あんパンやクリームパンとは言いませんけど、たとえばパン・オ・ショコラとかショソン・オ・ポムとかの本格的なヴィエノワズリがあったら、たちまち評判になると思うんですが」
陽輔ほどの男前だと、別の意味でも女性客の間で評判になりそうだ、などという不純な考えがふと頭をよぎる。
ろくに手入れをしているようにも見えないのに、ほぼ左右対称にきりっと伸びている眉。はっきりとした二重だが、甘さよりも鋭さを感じさせる切れ長の目。キスをするのに邪魔になりそうなくらい高い鼻。きちんと髭を剃った清潔感のある口元。ちょっととっつきにくそうなところが、また悪くない。
「椎名さんは」
端正な顔をあたかも美術品でも鑑賞するみたいに凝視していたところに、いきなり低い声で名前を呼ばれて、唯吹の心臓が跳ねた。
「あ、はい。なんですか」
「女性の好みに詳しいんだな」
「甘いものが好きなのは女の人だけとは限りませんよ」
なんでも好き嫌いなく食べる唯吹だが、どちらかといえば甘党だ。特に焼き菓子やペストリーの類には目がない。
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