§3

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§3

 翌日、陽輔から電話がかかってきた。昼休みに折り返すと、ぶっきらぼうに質問される。 「普段、デートでどういうところに行くんだ」 「最近、まともなデートなんてしてませんよ」  ふっと、電話の向こうの気配が緩んだ。 「あ。久住さん、今呆れましたね?」 「いや、昨日の口ぶりでは、なんか経験豊富そうだったから」 「最近は、仕事が忙しくてそういうことに割く時間がないだけです」 「ああ、わかる」  今度は、はっきりとした笑い声が漏れてきた。昨夜別れ際に見た飾り気のない笑顔を思い浮かべてしまう。 「俺も似たようなもんだ。休みの日も一日厨房に籠って、パンの試作してたりするから」  さもありなん、という感じだ。かく言う唯吹も、休日は語学の勉強をしたり、情報収集のために飲食店めぐりをしたり、自社の扱う新商品の味見を兼ねて料理をしたりと、結局仕事の延長のようなことばかりしている。スポーツにも映画にも興味はないし、物欲もあまりない。スーツ以外の服は量販店で済ませるし、腕時計やオーディオに凝るタイプでもない。絵に描いたような無趣味だ。     
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