§4

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 日曜日の待ち合わせは、武藤に教えてもらった店の最寄り駅近くの書店にした。  約束の午後五時よりも十分以上早く着いてしまった唯吹が、グルメ関係の雑誌が並ぶ棚へと足を運ぶと、立ち読みをしていた長身の男がひょいと顔を上げた。 「あ」 「あ」  同時に声を上げてしまう。 「早いですね」  そう声をかけると、陽輔は持っていた雑誌を平台に戻して、短い髪を照れたように掻き混ぜた。 「待たせたら悪いと思って」  服装にも気を遣ったのか、今日の陽輔の出で立ちは「鶺鴒亭」の前ですれ違ったときよりもシックな雰囲気だった。色落ちのないスリムなブラックデニムに生成りのセーターを重ねて、グレーのストールを巻いている。肩幅があるのでシンプルなスタイルが映える。 「気にしないでください。僕も、仕事のリサーチをするつもりで早めに来ちゃったので」 「専門書でも買って勉強するのか」  唯吹は肩をすくめた。 「それもありますけど、飛び込み営業なんかに行くときは、食べ物屋以外もあちこち覗いて回ることにしてるんです。特に本屋は、その街の雰囲気を知るのにいいので」 「そうなのか?」  陽輔は要領を得ない顔だ。     
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