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思いのほか弾けて欲が出る。疎らな拍手の後、目を瞑って二曲目の冒頭を思い浮かべる。
二曲目はバッハの無伴奏組曲の五番ガヴォット。主旋律は前打音を生かした二分の二の重厚感があるリズム、中間部は三連符の滑らかなメロディ、主旋律と対照的な優美さがある。身体が覚えるほどまで弾きこんでいる曲だ。完成度の高さで勝負することになると思った。カプリースの方は悪くない出来で終えたから、余程大きなミスをしない限り予選は通ると思った。その時だ。
最後列に頭一つ分高い人影。
見間違えるわけがない。
たとえ派手なパーマがあてられていて明るく染められていても。彫像のような顔立ち、薄い唇、涼しげな切れ長の瞳。
神木だ。
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