7/8
前へ
/78ページ
次へ
「泣くなよ? お前涙腺よえーから」  そう言われて、涙が出ていないことに気付く。 「泣いてない」  神木は思い出話をするでもなく、ポンと肩を叩いてさらりとこう言った。 「そう? じゃ、な。俺はそろそろ帰るわ」  四年ぶりに会って、たったそれだけ?  無意識のうちに神木のコートの袖を掴んだ。 「何?」  何と言って引きとめよう。怪訝に見下ろされてから、慌てて言い訳を考える。気の利いた答えが思い浮かばない。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加