第1章 懐かしい眼差し

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2  初対面だよ――妃実ちゃんはそう言った。  コンビニの前で偶然に会った友達だよ――大和はそう言った。 「久遠葵」というその人のことを。  当の久遠さんは、その綺麗な顔にただ薄く笑みを浮かべているだけだ。  ……なんか釈然としない。  初対面の大和の友達を見て、妃実ちゃんは何をあんなに立てなくなるほど驚いていたのだろう。大和も大和で、そんな妃実ちゃんを見てもわたしみたいに慌てたりなんかしなかった。まるで妃実ちゃんの反応を最初から予想してたように。  絶対に変だ。全くもって釈然としない。  本当は妃実ちゃんは久遠さんのこと知ってるんじゃないんだろうか。だって、妃実ちゃんははっきりと「葵」と久遠さんの名を呼んだ。そのことを、大和と久遠さんが離れた時に妃実ちゃんに指摘すると、妃実ちゃんは笑って「言ってないよ?」ととぼけた。じゃあわたしの聞き間違い? ……違う、そんなことはない。  大和と目が合う。  いつも穏やかな彼の視線が、どこか揺れている。  大和はどうしてそういう顔をするんだろう?  大和と妃実ちゃんと久遠さん。  きっと三人の間には何かがあるのだ。たぶん、それをわたしだけが知らない。  なんだかモヤモヤっとした気分になった。仲間はずれにされているような、そんな子どもじみた嫉妬。
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