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「あ……!」
久遠さんはようやくそのことに思い当たったようで、しまったとばかりにと口許に手をやった。
「ご、ごめん。大和たちがそう呼んでたからつい。会ったばかりなのにいくらなんでも馴れ馴れしいよな。不愉快にさせたのなら謝る」
「い、いえ……」
別に不愉快なんかではない。それどころかあまりにも違和感がなさすぎて。
そう呼ばれることが当たり前のようで。
そんな自分の感覚がまた不思議でたまらない。なんだろう、これ。
「別に名前で呼んでもらっても構わないですけど」
戸惑いながらも、気が付けばそんなことを口走っていた。久遠さんの顔が嬉しそうに晴れる。子どものような無邪気な表情。
「そっか。よかった。それじゃさ、里珠もオレの事名前で呼んでいいよ。それでお互い様だ。ほら、呼んでみて?」
「えっ? え、えっと……葵、さん?」
「さん、いらない」
「で、でも……」
「いらないって。オレたち、同じ年」
これには少し驚いた。大和の友達というから、てっきり年上だと思っていた。でも同い年なら……。
「じゃ、じゃあ遠慮なく――葵」
「――よし!」
何が「よし」なの?
……最初は大人しい人かと思っていたけど、そうでもないかも。
とりあえず……変な人だ。
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