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4
大和の家の前で葵とは別れた。この時間に家を訪ねると言うことは、葵は今夜は大和の家に泊るのだろう。
「里珠は寄っていかないの?」と訊かれ、苦笑いしてしまった。そう安易にこんな夜に男の人の家を訪ねるなんてことやってたら、親からはすぐに交際を反対されてしまう。いくら幼なじみの大和でも――いや、相手が大和だからこそ、変に家族とこじれることは避けたかった。
なんて、そんなこといちいち葵には説明しなかったし、葵も何も訊いてはこなかったけれど。
家に帰ると、お母さんとお父さんが居間でテレビを見ながらビールを飲みかわしていた。いつもの光景だ。うちの両親は子どもの目から見ても仲がよろしい。お母さんがにこやかにわたしを迎えた。
「おかえり、里珠。お疲れさまー」
「ただいまー。お父さん、おかえり」
「おう。ただいま。どうだ、お前も一杯?」
すでにちょっとほろ酔い加減のお父さん、未成年のわたしにも平気でビールを勧めてくる。それもわりといつものことだ。いつものごとく、丁重にお断りすることにしよう。
「ごめん。疲れたからやめとくー。風呂入って寝るねー」
「おお、そうか。じゃあ、ゆっくり休め」
「ありがと」
わたしはそのまま居間を出しようとして、ふと思いついて足を止めた。
「あ、そうだ」
二人が同時に振り返る。
「なんだ?」
「どうしたの?」
「あのさ、わたしの救急車嫌いって何か理由があったっけ?」
軽く……本当に軽く訊いてみたつもりだったのだけど。
ふたりの笑顔がピタリと貼りついたように動かなくなった。その反応に首を傾げた時、こめかみに、ズキッと軽い痛みが走った。
まるで――そう、警鐘のような痛み。
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