第1章 懐かしい眼差し

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 一瞬目が点になってしまった。  まったくもって、質問の意味が分からない。 「どんなって……どういう意味?」 『――』  返ってきたのは、どこか重い沈黙。たっぷり五秒……十秒。さすがに不安になった。 「や、大和?」 『いや……ごめん。なんでもない』  やっと返ってきた大和の声は小さい。なんとなく気まずい雰囲気に、わたしはあえて明るい声を出した。 「別に謝って貰わなくてもいいけど。何? 葵がどうかしたの?」 『……葵、か』  ポツリと返された呟きが、わたしが「葵」と呼び捨てたことに対してのものだと気付き、慌てた。 「あ。あのね、葵が――あの人がそう呼んでいいって言うから、つい。同じ年だって言ってたし……た、他意はないよ?」 『わかってる。別に、いいよ』  小さく笑う気配がした。その柔らかな気配はいつもの大和のもの。それにはホッとしたものの……。
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