第1章 懐かしい眼差し

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 一つ大きく息をつき、再びベッドに横になる。  ……やっぱり大和、ちょっと変だった。  好きだ、とか言われたことじゃない。大和は時々そういうことを口にする。その度にドキドキさせられてあたふたするわたしを、大和は「いい加減に慣れて?」と笑うのだ。  だから、変だと思った原因はそれじゃない。 「大和、葵を気にしてた……?」  わたしが二人で一緒に帰ったから? だけどそれは当然大和も知ってて……だったらなぜわざわざ電話かけてきたのだろう? あの聞き方……まるで、葵とのこと探るみたいだった。  そこまで考えて、わたしはブンブンと頭を振った。大和が葵とわたしのことを探る? そんなこと必要ない。意味がない。でも、だけど……。 「……あーもうっ!」  ゴロゴロとベッドの上を転がった。なんだかモヤモヤとして気分がまったくスッキリしない。  今日はずっとこんな感じだ。ずっと何かを考え続けている。  そして、その全てが「久遠葵」という人に関係することだ。  初対面の時の、妃実ちゃんの反応。  突然バイト先にやってきた葵。  救急車のことを聞いた時の両親の反応。  そして、大和からの電話。   脳裏に、葵の綺麗な顔が浮かんだ。「里珠」とわたしを呼ぶ声が甦った。懐かしさ感じる眼差しを思い出した。 「ああ、また……」  胸が痛い――セツナイ。  その感情を持て余し、ギュッと固く目を閉じた。  葵。どうしてあなたを見るとこんなに胸が痛むのだろう。  ただその答えが知りたかった。
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