第1章 懐かしい眼差し

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「それにしても、あんたたちまだうまくいってるのね」  思わず苦笑いが漏れた。妃実ちゃんの毒のある物言い、昔から変わらない。 「うまくいってるよ」 「ふうん。つまんないわね」 「え?」  さすがにぎょっとしてしまう。妃実ちゃんはくすくすと笑った。 「冗談よ。でも、大和と里珠が付き合うって言いだした時、正直、うまくいくのかなぁって不安だったのよね、わたし」  それは初耳だ。不穏な言葉にただ妃実ちゃんを見返した。妃実ちゃんは少し目を伏せて独り言のように続ける。 「でも、もう一年以上も続いてるんだねー。心配するだけ無駄だったかな。取り越し苦労だった」 「妃実ちゃん?」  なんだか妃実ちゃんの言葉、すごく意味深に聞こえる。もう少し深く聞き返してみようかなとした時、妃実ちゃんが顔を上げてパッと目を見開いた。 「あ。大和、帰って来たよ」  わたしも妃実ちゃんと同じ方向に目を向けると、人が歩いてきているのが見えた。遠目からでも長身とわかる男性。そして少し長めの癖のある髪。確かに大和だ。でも、一人じゃない。同じ年頃の男性と一緒だ。その男の人もまた大和と同じぐらい背が高い。 「友達かしらね。彼女が来るって言うのに友達連れてくるなんて、気の利かない男ね」  妃実ちゃんの毒舌にただ笑っていると、大和がわたしたちに気付いて手を振ってきた。そして隣の人と何か言葉をかわしている。おおむね、わたしたちのことを説明してたりするのだろう。 「――あら? あの人どこかで……」  二人の顔がはっきり見えるぐらい近付いてくると、妃実ちゃんは訝しげに眉を寄せた。知り合いなのだろうか。
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