第1章 懐かしい眼差し

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 大和はわたしたちの前に来ると、端正な顔を申し訳なさそうに歪めて片手を上げた。 「ごめん、里珠。ちょっと買い物に出てた。――って、なんで妃実香もいるの?」 「いて悪かったわね。あんたの可愛い彼女が一人で待ちぼうけ食ってんのに付き合ってやってたのよ」 「ああ、そりゃどうもありがと」  妃実ちゃんの喧嘩腰をさらりと流すと、大和は穏やかな眼差しを再びわたしに向けた。 「だいぶん待った?」 「ううん。大丈夫。妃実ちゃんと喋ってたから」 「ほら、みなさい。感謝されてるじゃない」 「だからありがとうってば」 「ありがとうって態度じゃないし。それより、大和。彼は?」  妃実ちゃんが遠慮なく、少し離れたところに立っていた友達らしき人を示す。その彼は自分に注意を向けられ、少しひきつったように微笑んだ。改めて見ると、男の人にしておくには勿体ないぐらい綺麗な人だった。可愛らしい、という表現の方が近いかもしれない。男の人に対してすごく失礼だけど。 「あ、ああ、こいつね……」
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