プロローグ

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「本当の事を言う必要はないさ」 「なるほど。知らない方がいい事もある」 「何か決まったら、また、連絡するよ」  僕は立ち上がると、テーブルの伝票を手に取った。 男の脇を通る時、男のテーブルに封筒を置く。 中にはトランクルームの鍵が入っている。 そして、男の向かいの椅子に置いてあるアタッシュケースを、さりげなく手に取るとレジに向かった。  アタッシュケースはズシリと重い。 中身は現金。 「いつもニコニコ現金払い」 僕は笑みを浮かべた。 「やっぱ、現金だよな」  独り言を呟く後姿を、封筒を持ったまま男が目で追っていた。 「今まで慎重すぎるくらいだったのに……。 何か……あった?」 男は封筒を胸の内ポケットにしまった。 「ま、いいか」 男も伝票を手に取り、席を立った。
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