3人が本棚に入れています
本棚に追加
朱音は一基の隣にある空いているブランコに座った。
キィ、と小さく軋む。
「あれだよ、一基」
「何だよ」
「元気だしなよ」
「無理だろ」
そう言って一基は大きなため息を吐く。
「珍しく一目惚れしてたもんね。自分から積極的に仲良くなってたしさ。まあ、頑張ってたと思うよ」
「客観的に言われると恥ずかしいもんだ」
「でもさ、もう一歩を踏み出さないんだもん。そりゃ別の人のところ行くよ」
「一歩って何だよ」
「はっ!! 分かってるくせに聞くんだ?」
吐き捨てるように言った朱音を睨み付け、一基は下唇を噛みしめる
だが、すぐに下を向いてため息をついた。
「だよなぁ……」
一基は自分でも分かっているのだ。
「けど、無理なんだよ。怖いんだよ。自分の気持ちを伝えて、それで木っ端みじんになったら、と思うと。友達ですらなくなったらどうしようって」
「一基の臆病者っぷりは昔からよね。私に言わせりゃ、世界で二番目の臆病者だわ」
「……何それ」
「つまり、一番を与えてやるにも値しないとか、この中途半端野郎とか、そんな感じ」
「お前は本当に酷いね。ズタズタだよ」
「まあ、一基らしいっちゃそうだけどね」
「むしろ傷つくわ」
沈黙。
最初のコメントを投稿しよう!