ブランコ

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 朱音は一基の隣にある空いているブランコに座った。  キィ、と小さく軋む。 「あれだよ、一基」 「何だよ」 「元気だしなよ」 「無理だろ」  そう言って一基は大きなため息を吐く。 「珍しく一目惚れしてたもんね。自分から積極的に仲良くなってたしさ。まあ、頑張ってたと思うよ」 「客観的に言われると恥ずかしいもんだ」 「でもさ、もう一歩を踏み出さないんだもん。そりゃ別の人のところ行くよ」 「一歩って何だよ」 「はっ!! 分かってるくせに聞くんだ?」  吐き捨てるように言った朱音を睨み付け、一基は下唇を噛みしめる  だが、すぐに下を向いてため息をついた。 「だよなぁ……」  一基は自分でも分かっているのだ。 「けど、無理なんだよ。怖いんだよ。自分の気持ちを伝えて、それで木っ端みじんになったら、と思うと。友達ですらなくなったらどうしようって」 「一基の臆病者(チキン)っぷりは昔からよね。私に言わせりゃ、世界で二番目の臆病者(チキン)だわ」 「……何それ」 「つまり、一番を与えてやるにも値しないとか、この中途半端野郎とか、そんな感じ」 「お前は本当に酷いね。ズタズタだよ」 「まあ、一基らしいっちゃそうだけどね」 「むしろ傷つくわ」  沈黙。  
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