願うのは

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 晴れた日には、君の好きな季節の花を買って。  家に帰って、逆さのてるてる坊主に祈ろう。  雨の日には、買った花を持って。  『あの場所』に行って祈ろう。  あの暗闇から僕を引っ張り出してくれた君へ。  あの時僕が壊してしまった本当の君へ。  過ぎた結果は覆らないことなんて知っている。  だけど……  だけど……  ――梅雨時の小雨の中、一本の電柱の前にぽつりと佇む少年がいた。  彼を見るものは誰もいない。  少年はぬれることを拒まず、地べたに腰を下ろした。  そして、持ってきていたものを丁寧において頭を垂れた。  その様子は、さながら懺悔するようでもあった。  しばらく経って、少年は俯いたまま歩き出した。  淡い水色をしたシャツから雨水が滴り落ちる。  そんな彼の様子を……  誰も見るものはいないのだ。
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