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時空間転送装置
私は、時空間転送装置エスペランサの研究や宇宙飛行士の資格取得に明け暮れていた時間を呪い、彼女が去った三ヶ月後、研究所に一時的に復帰して、装置を破壊しようと考えていた。
「教授、帰って来て頂けると信じていました。差し出がましい言い方かもしれませんが、この研究を成功させる事こそが、奥様へのはなむけだと私は思っていました。」
「江口、そんな知った風な口を利くな、お前、愛する人を失った事があるのか?」
「すみません、しかし、私は教授と是非とも成功させて、教授に喜んで頂きたいんです、それは分かって頂けませんか?」
研究員の江口は秀才の熱血漢。それまで、研究の失敗の連続にくじけそうになりながら、どれほど彼に勇気づけられて来た事か。しかし、私はしばらく口を利かずに数分を過ごした。彼も、私の複雑な気持ちを察して、それ以上声をかけて来なかった。そして私は何気ない素振りで彼に訊いた。
「江口、今日はまだここに居るのか?」
「はい、システムに送り込んだ数値の座標確認がまだなので、もうしばらくは居ます。何かお手伝いでしたら、徹夜してでも喜んでやりますが……」
その時は、そんな思いやりのある彼をさえ忌々しいと思ったが、いざ、装置を前に考え込んでいると、何も成果のないガラクタでも、妻の言う「精一杯楽しめる」事を成功させる確率が零ではないと思えて、私は彼に正直に話してみた。
「江口、」
「はい、何でしょう。」
「……いや、実はな、このエスペランサだが、今日、破壊するつもりでやって来た。」
「え?教授……そ、そんな……でも、そんなに追い詰められていらっしゃったんですね。ああ、涙が……もう、駄目なんですね?壊しちゃうんですか?教授が決断なさったんだったら、もしそうなら、私も一緒に壊します。哀しいけど、壊します。」
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