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「ねぇ、そろそろわかった?」
「……」
この間、屋上で出会ったの半透明の少女。
たぶん、幽霊。
幽霊の『ユウ』(仮名)は、今日も親しげに笑いかけてくる。一見、親しげだけど、意地の悪い笑みだなぁ、ということぐらいは、短い付き合いでも、もう分かっている。
俺は渋々、弁当を突く箸を止めた。
「その制服。……どこで見たんだったか考えてたけど、今日、駅で見かけた。ここから二駅の、そこそこ進学校なお嬢様学校」
「へぇ…」
「おい、おまえのことだろ!…まあ、いいや。それで、学校名で検索かけて、出て来た画像がこれ!」
ポケットに突っ込んだままにしていたケータイをぱかりと開いて、すぐに出せるようにしていた画像フォルダの画像を、ずずいっと鼻先に突きつけてやった。
驚いたのか、ユウは目を丸くした。
「おお…うん、そうだ。そうだった気がする」
すぅ、と色を吸い込むというか、じわっと広がるというか。
真っ白な画用紙に、水っぽい薄めた絵の具の雫を垂らした時のように、ユウは色を写し取る。
モノクロの、濃淡だけで表現された制服に、色がつく。
彼女は、くるりとその場でターンして、遅れてふわりとついてくるスカートの裾を眺めて──笑んだ。
「うん、正解だ。私はきっと、これを着てた」
お眼鏡には適ったらしい。
呆れ顔を保ちながら、俺は内心で胸を撫で下ろした。
……しかしなぜか、ユウに腹芸が通じないというか、心の中まで見透かしてくるところがあるのだ。
「……それで?『私が何者なのか』については、調査は順調なのかな?タイムリミットはあと三週間…ってとこだけど?」
見れば、相手は満面のにやにや笑い。
「……順調じゃないの、分かってんなら聞くなよなあ!」
俺は苛立ちまぎれに、弁当をかっこんだ。
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