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大吾さんと姉が、撮影の準備をしている間に、一旦自宅に戻ってシャワーを浴びさせてもらう事にした。 今日は体育もあったし、大事な洋服を汚してしまう訳には絶対にいかない。 2階に上がるため、外階段を昇っていた。 OKはしてしまったけど、本当に僕で大丈夫なんだろうか。正に会社としての勝負所に素人である僕を使っていいのか? いくら人気があると言っても、それは高が知れている。 そんな事を考えながら歩いていた所為で前なんてちっとも見ていなかった。 一段上ろうと足をかけた瞬間、ツルリと滑って、バランスを崩した。 背が高い所為もあって、一旦バランスを崩すと修復不可能でそのまま下に落ちていく。 否、落ちて行ったと思ったが、後ろから何かしっかりしたものに支えられた。 おそる、おそる覗き込むと、そこには斎藤君がいて落ちかけた僕をその手でしっかりと支えてくれていた。 どちらかというと、ひょろりとした印象を受けていた斎藤君だったけど、支えられた腕はとてもしっかりとしていた。 体格だけなら僕の方がいいのかもしれないけど、こんな何も無い階段で転ぶ見かけ倒しの僕より、斎藤君の方が、男らしい体なのかも知れない。 って、何考えてんだ僕。 「あ、あ、りがとう。」 「ああ、大丈夫か?」 「あ、うん。」 「気をつけろよ?」 そう、優しく言われ、コクコクと首を縦に振った。 下の方から、大吾さんが「おーい、どうした?」と声をかけながら上がってきた。 斎藤君は仕事の途中だった。 慌てて、大吾さんに言った。 「僕が階段から落ちそうになって助けてもらってたとこ。」 「別に助けたってほどの事は無いだろ。」 照れくさいのか、視線を逸らしながら斎藤君は答えた。 大吾さんは 「大丈夫か?痣とか出来てないか?」 と心配そうだった。 僕は大丈夫と答えて自室に戻った。 背中を支えられた手の感触がいつまでも残っている気がした。
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