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何とかして、この感情を忘れる事は出来ないか、その時はその事ばかりを考えていた。
涙も滲んでいるし、ぼろぼろだ。
どのくらい経っただろう。カチリと音がすると寝室の電気が点いた。
「……ちーちゃん。」
息をのむ音の後、名前を呼ばれた。
姉の声に顔を上げると、ふわりと抱きしめられた。
姉の付けている香水のグリーンの香りがした。
「大丈夫、大丈夫よ。だって、斎藤君いい子だったじゃない。とっても素敵な人をちーちゃんは好きになったのね。」
「でも、だって、ぼ、僕も斎藤君も男だよ。気持ち悪いに決まってるよ。」
嗚咽を上げながら僕がいうと、姉はゆるりと首を左右に振った。
「そんなこと無いのよ。好きって気持ちを恥じる必要なんてないわ。それは男でも女でも変わりない事よ。」
自信たっぷりに姉がいうので、少しだけ、ほんの少しだけ好きで居てもいいんじゃないかという気がしてきた。
「それに、斎藤君はたぶんそんな小さな事気にするようなタイプじゃないと私は思うな。」
「ど、どういうこと?」
「恐らくだけど、あの子、男だとか女だとかそういう記号に興味が無いのよ。自分が気に入るか否かのニ択よたぶん。」
姉の言っている事は良くわからなかったけど、あまりに自信満々に言われて、反論が出来なかった。
「とりあえず、傷の手当てしようか。」
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