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◆ 好きな人といられるのは嬉しい、でも少しつらい。 僕が斉藤君を好きだと自覚したあの日に撮った写真を使った広告は、急ぎと姉が言っていただけあってあの後すぐに街中に張り出された。 かなり大規模なプロモーションだったらしく、ファッションビルを中心に駅等にも張られているらしい。 それに、雑誌。普段は男性誌中心だったのだが、今回の広告の反響で女性ファッション誌にもおまけとしてミニポスターがついている。 これすべて、吉野君の受け売りなんだけどね。 「マジで、男の色気?っつーの、半端ねーよ。こんな男になれるもんならなってみたい!!」 吉野君が雑誌を見ながらため息をついていた。 僕には男の色気?っていうのは正直よくわからない。ワイドショーのコメンテイターが新境地と言っていたけど色気といっても平凡な高校生である僕が何かそんなものを持っているはずが無い。 ただ、この時の僕がいつもと違っているとしたら、それはきっと斉藤君のことを考えていたからだ。 いくら馬鹿な僕でもわかる。 きっと皆が僕の色気といっているのは斉藤君への恋する気持ちだ。 そう思うと、斉藤君への気持ちを日本中に晒しているようで酷くいたたまれない気持ちになった。 タイアップの香水もお蔭様で好評のようで、現在かなり品薄の状態が続いているらしい。 「なあ、お姉さんに、撮影で使った香水とか残ってないか確認だけでもしてもらってもいいか?」 吉野君は本当に申し訳なさそうに言った。 姉を含め商品に匂いが移ると困るという理由で香水などは絶対につけていないはずだ。 メーカーに返品していなければ恐らく香水はあるだろう。無くても、僕がメーカーからお礼としてもらった物もいくつかある。 「うん、聞いてみる。」 「マジか!!悪いな。ちゃんとお金は払うから。」 別の友人に呼ばれ、吉野君と山田君が離れていくと斉藤君と二人になった。 「いいのか?」 確認するように斉藤君に聞かれたけど何のことを言っているのかわからない。 頭の中が疑問符で一杯になっていると、斉藤君は一人で納得したように「やっぱりいい。」といった。 こんな時僕がもう少し察しがよければきっと斉藤君が何を言おうとしているかわかるんだろうけど、人付き合いの経験値が0に近い僕には結局よくわからないままだった。
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