第4章 談話室の外で

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    「つまり、偶然前を通りかかったところを逃亡しようと犯行現場から飛び出してきた犯人にぶつかられて、顔を見られたからとか何とかで、殴られたんでしょうね」 「幸か不幸か、倒れたきり起きなかったから、犯人は致命傷を与えずに立ち去った。 おかげで、犯人の顔も当時の状況も記憶している目撃者を失うことがなかった、と」 台本や添付資料にない、個々人でどこからか拾ってきたらしい情報をそれぞれに披露し始める。 「ぶつかられた時、ツバを吐かれたんだそうです。そんな証言も、彼が意識を取り戻したからこそ得られたんですから。 その証言通り、唾液は上着にも拭き取ったハンカチにも残っていたというのが!」 「まるでドラマのようですねー」 段々に噂話レベルになってきた。 裏の取れていない話を垂れ流し、とまたネット上で炎上しかねない。 さり気なくMCは話の回収を始めた。 「警察は、その唾液のDNAで過去の逮捕者リストから一致する容疑者を割り出し、任意同行で取り調べに入った模様です。 このまま事件解決へと導かれることを祈りたいと思います。 さて、続いては……」   END
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