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「ほぉ、最近の若者は…」
「違います。私の職場にいる子たちは、決してそんなことはありません。
若者だからとひと括りはいけませんよ、先生」
「やっぱり、良い人じゃないですか」
ふふ、と笑うと先生は手元に何かをメモした。
「出先からオフィスへ帰る道で、一軒家の前を通りました。
そこから急いで飛び出してきた若い男にぶつかられて、尻餅をついたんです。
そしたら、詫びるどころか興奮したようにあれこれ悪態をついてきて、突然のことで言葉が出ないでいると、いきなりツバを吐きつけてきたんです」
「今どき、そんなことする輩がいるんですか?古い洋画でしか見たことがない」
「私も唖然としました。じっと見返したら、すぐに目を逸らして何か喚いてから立ち去っていきました」
「そうですか。それは災難でしたね」
言いながら、書類から目を離すと、先生は崎田に向き直った。
「有難うございました。もうお帰りいただいて結構ですよ」
唐突に結果だけ告げられて、崎田は驚いたように真っ直ぐ見返した。茫洋と微笑む彼は、もう聞く姿勢になくて。
仕方なく、崎田は言われた通りに立ち上がった。
一礼して振り返り、入ってきたドアへと歩き出す。
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