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第3章 リコの見たこと
◇◇◇◇◇◇◇
パタンと、ドアが閉まって崎田さんっていうおじさんが出ていった。
なんか真面目そうで、笑ったりしない人だったから、リコから見たら怖そうに感じて、ドアの方に振り向いた時にここで黙ってお話を聞いていたことを叱られるんじゃないかなって思った。
ビクビクとお膝に置いてた手をギュッと握って、おじさんが出ていくまで俯いて待っていた。
何にも言われなくて良かった。
「ごめんね、リコちゃん。お待たせしたね」
ニッコリとお兄さん先生が笑いかけた。
さっきのおじさんのことを良い人だって何回も褒めてあげてたけど、絶対に先生の方が良い人だと思う。
「ううん。リコ、待ってないよ」
「ふふ、でもお利口にして座っててくれたでしょ?有難う。安心して崎田さんとお話できたよ」
先生はリコに向かって手招きをした。
ソファから降りて、さっきのおじさんが座っていた椅子に座るように言われたから、きっとリコの診察の番なんだな。
「あのね、勝手に入ってきて…ごめんなさい」
「ん?」
「いつの間にか、先生の病院に入ってきちゃったみたいなの。お母さんに言いつける?」
「…そっか」
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