0人が本棚に入れています
本棚に追加
ふと困ったように眉が下がるけど、やっぱり笑ってくれたから先生は悪い人じゃないみたい。
「学校からここに来るまでに、大人の人に会ったかな?」
「うーん、このお部屋に入る前にさっきのおじさんに会ったよ」
「その前は?」
「学校の先生と見守り隊のお母さんに会ったよ」
「そっか。覚えてないならいいんだ。先生とリコちゃんのお話はおしまい」
「そうなの?もう帰っていい?」
「うん、帰りは先生の机のお隣のドアからね。出たらすぐに帰り道が分かるよ」
「一人でも分かる?」
「うん。リコちゃんよりも小さい幼稚園の子も来ることがあるけど、きちんと行けるよ」
「それなら大丈夫。リコ、幼稚園の子よりお姉ちゃんだもん」
そうだね、と優しく頷く先生の方を見て、リコはペコリとお辞儀をした。
「先生、さようなら!」
頭を上げると、跳ねるようにドアへと歩き出した。
開いたドアの向こうで、ランドセルを背負ったリコごと光の渦が包み込んだように見えた。
ーーー最後の審判の部屋には、どんな『閻魔サマ』がいて、何を基準にどんな『来世』へ送られるのか。
事実は、誰も知らないーーー。
最初のコメントを投稿しよう!