第3章 リコの見たこと

2/2
前へ
/10ページ
次へ
ふと困ったように眉が下がるけど、やっぱり笑ってくれたから先生は悪い人じゃないみたい。 「学校からここに来るまでに、大人の人に会ったかな?」 「うーん、このお部屋に入る前にさっきのおじさんに会ったよ」 「その前は?」 「学校の先生と見守り隊のお母さんに会ったよ」 「そっか。覚えてないならいいんだ。先生とリコちゃんのお話はおしまい」 「そうなの?もう帰っていい?」 「うん、帰りは先生の机のお隣のドアからね。出たらすぐに帰り道が分かるよ」 「一人でも分かる?」 「うん。リコちゃんよりも小さい幼稚園の子も来ることがあるけど、きちんと行けるよ」 「それなら大丈夫。リコ、幼稚園の子よりお姉ちゃんだもん」 そうだね、と優しく頷く先生の方を見て、リコはペコリとお辞儀をした。 「先生、さようなら!」 頭を上げると、跳ねるようにドアへと歩き出した。 開いたドアの向こうで、ランドセルを背負ったリコごと光の渦が包み込んだように見えた。 ーーー最後の審判の部屋には、どんな『閻魔サマ』がいて、何を基準にどんな『来世』へ送られるのか。 事実は、誰も知らないーーー。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加