第1章 座りの悪い椅子

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第1章 座りの悪い椅子

キシ、と尻の下が鳴る。 「まったく……いつになったら頼んだ代わりが届くやら」 社長椅子とは程遠い、座面のクッションがそれはそれは良ろしくないオフィスチェア。 この職場においては最も地位が上であるはずの僕が、何ゆえこのような扱いなのか。 決して仕事の出来ない男の不当なクレームではないはずだ。それに見合うだけの仕事は量も成果もこなしているという自負もある。 ため息混じりに、デスクの上へ視線を落とした。 毎朝一番に部下に届けられる資料が置かれている。ここに書かれる名は毎日違う。話す内容も一人一人違うものの……。 「た…っいして、内容は代わり映えしないしっ」 もう一つため息。 【本日の予約者】 愛想のないレタリング文字で書かれたタイトル。 その下には、数人の氏名と必要なプロフィールが羅列されている。 ざっくり言えば、要は訪ねてくる来客の話を聞いてやる……もとい、聞いてさしあげる(表向きの表現)のがこの部屋のヌシのルーティンワークだった。
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