はじめまして、おにいちゃん

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「ねぇはるちゃん」 ご飯を終え、お風呂や歯磨き、寝る支度を済ませた小春と怠惰。 明日の学校の準備をしている小春の背に声をかけたのは怠惰だ。 「なんですか?」 教科書とノートをとんとんと合わせてランドセルに詰めていく。 その動きはのろのろとしていて、先程から一向に進まない。 「学校、嫌?」 その言葉に、ぎくりとする小春。 「…そんなこと、ないですよ」 振り返らずに答えたが、あきらかに声が小さい。 これでは肯定しているも同然だ。 何度も確認をした時間割を再びチェックする。もうこれで七回目だ。 「じゃあ、学校たのしい?」 悪意などはなく、本当に不思議に思ったのだという風にきいてくるものだから、どう答えたものかと頭を回転させる。 「はるちゃん。あのね」 怠惰の声色が変わる。 まるで憐れむかのように、優しく。 「だいじょうぶですからしんぱいしないでください」 勢いよく振り向いた小春は、また困ったように笑っていた。 …開いたままの筆箱を持って。 「あっ」 勢いに任せて四方八方へ散らばる文房具たち。 困ったように笑っていた小春の顔が瞬時に驚き、困惑、悲しみところころ変わっていく。 文房具たちは隙間に入ったり物陰に隠れたりして、何がどこへ行ったのかわからなくなってしまった。 文房具を七つ集めれば願いが叶うかもしれない。 「…だいじょうぶですから」 悲しげに小さく呟いて、文房具たちとのかくれんぼが始まった。 「あは、一緒に探そう」 小春が静かに頷き、鬼が二人に増えた。 文房具自体はそんなに無いのだが、短くなったり小さくなったりしたものも多く、見つけるのは苦労しそうだ。 ふたりで床に這いつくばって机の下やベッドの隙間、カバンの後ろなどを探す。
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