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「…ごめんなさい、おにいちゃん」
小さな、精一杯の声だった。
「なんで?ぼく、楽しいよ。ふふ、かくれんぼみたいだねぇ」
本当に楽しいといった笑顔。
どこかなぁ、なんて言いながらまた探している。
小春は眉を八の字にして唇を噛み俯いてしまった。
「あっ、みつけたよ!」
背の小さなえんぴつを差し出す怠惰。
「…ありがとうございます」
それを受け取り筆箱へしまう。怠惰は再び大きな体を丸めて這いつくばっていた。
「こういうとき、見つけたいものをすぐに見つけられる機能とか、あればいいのになぁって思っちゃうよねぇ」
夢を語るアンドロイドは明るく笑って、ベッドの隙間に手を差し入れたりしている。
「おにいちゃん、もういいです」
小春は申し訳なさそうに体をまるめて怠惰のシャツの裾を掴んでいた。
「…もう、ねるじかんになってしまうので」
時計は午後9時半を指していた。
「ほんとだぁ!ごめんねはるちゃん、明日見つけておくね」
肩を落として、しょんぼりと眉を下げる怠惰。
そんな怠惰を見て、小春は笑顔を貼り付けた。
「ありがとうございます」
いそいそと筆箱をランドセルへしまい、綺麗にたたまれた明日の着替えと一緒に机の上に置く。
いまだしょんぼりとしている怠惰の方へ向き直ると緑の瞳と視線がぶつかる。
しばしの沈黙がふたりのあいだに流れた。
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