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「だから言ったじゃん……」
「なんで、こんなの吸ってるの?」
何度か煙を雨雲に向かって吐き出したハルさん。即答できない問いかけに僕はわざと長く煙を吸う。
「えっと……なんでかな……なんとなく?」
無駄な緊張が声を上ずらせる。
「……そんな日も、あるよな」
ハルさんはそれだけつぶやくと、殺風景な庭に視線を戻して黙ってまた煙草をふかす。
雨のしとしと降る音だけが響く、僕とハルさんしかいない古民家。二人黙ったまま静かに煙草の煙を吸っては吐き出す。
「邪魔して悪かったね」
随分と短くなった煙草を、土の上で消すとハルさんはすくっと立ち上がる。
「邪魔なんてそんな……」
僕もハルさんに倣って火を消す。ふと、見上げたハルさんが優しい笑みを浮かべていた気がした。
気がついたら、大丈夫の呪文を唱えていないことに気が付いた。
「ありがとうございます」
「……なにが?」
「えっと……その……」
傍にいてくれて。
それは僕の勘違いかもしれない。でも、お礼が言いたかった。
「たばこ、ごちそう様……お礼にさ、飯食わない?」
「え?」
唐突な飯の誘いに僕は目を白黒させる。
「職場でジャガイモ沢山もらったんだ。食いきれないから手伝ってよ」
「え……あ、はい!」
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