たばこ

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「いや、本当に……もう……いいから……っ」  僕を無視して消毒液を垂らすハルさん。沁みる傷口に思わず息を飲む。すかさず絆創膏を貼る。 「……」 「……」  ハルさんの大きな手の中で震える僕の、か細い手。もう、きっとバレてる。 「もう……大丈夫だから……離して」  僕をじっと見つめる、切れ長の黒い瞳の視線を感じる。顔が上げられない。 「……離したくない……って言ったら?」  ハルさんの低く渋い声が鼓膜を震わせ、思わず顔を上げた。怖いくらい真剣なハルさんの表情。 「……どう……して?」  ドクドクと不安と緊張で心臓が壊れそうになる。  答えようとしたハルさんの唇が震えているのが見えた。しかし、一度きゅっと口元をしめると、ハルさんはそっと手を離した。 「……ごめん、変なこと言って。セクハラだよなこんなの」 「セクハラなんかじゃない!」  離れたハルさんの手を今度は僕が握りしめる。驚いたハルさんの細い目が大きく開く。 「好きです……」 「……」 「は、ハルさん……の手が……」  あぁ、僕はなんて意気地なしなのだろう。 「俺……の手……」 「男らしくて、強くてかっこよくて……僕……ずっと」 「……手……だけ?」 「……っ」  もう、言うしかない!     
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