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「手だけじゃなくて……僕、は、ハルさんの事が……ずっと」
その時、ガラガラと玄関の建付けの悪い戸が開く音がした。シェアメイトが帰ってきた音だ。
「よぉ、何作ってるの?」
お酒の匂いを少し漂わせたシェアメイトがキッチンを覗きに来る。
「夕飯」
「ボナペティー」
少しそっけなく答えたハルさんに、上機嫌な彼はフランス語で召し上がれと言い残すと階上の自室へと消えていった。
「……好きです」
小さく、この世でハルさんにだけ聞こえるように小さく呟いた。もう、今からハルさんと普通に接することなんてできない。二度と顔を見れないか、もしかしたら……
「俺……」
ハルさんの声に身体が震えだす。
「人と、付き合いたいと思ったことなかったんだけど……」
「……」
ハルさんの手を握る僕の手と心臓がキリキリと凍り始める。
「チアキとは、付き合うって事したいと思ってた」
「え……」
「他の誰かじゃなくて、俺が、チアキを大事にしたいって思った……いいいかな?」
「は……はい!」
小さく囁くハルさんの問いかけに、僕は思わずまた元気いっぱい返事をしてしまった。
「チアキ……好きだ」
うれしそうなハルさんの笑顔が見えた次の瞬間、グイッと抱き寄せられ、広い胸板に顔が埋もれた。
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