背伸び薬

1. 新薬

　何時間眠っていたのだろうか。

　目を覚ますと外はすっかり明るくなっており、テレビでは昨夜とは別のアナウンサーの神妙な声が聞こえてくる。

　どうやらワイドショー番組のようで、おどろおどろしいテロップともに「変死」と書かれた文字が大きく映し出されていた。

　物騒なこともあるもんだ。いまだ体内に残っているアルコールに脳内を刺激され、再び寝ようとした順平の目を覚ましたのは、聞き覚えのある名前だった。

　日本発、オーストリア行きの旅客機の機内で変死した日本国籍の女性。それは紛れもなく昨日別れ話をしたはずの彼女だった。