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頭頂部まで抜けあがったザンバラ武者にまばたきを忘れたバンダナケミカルウォッシュ、アナボリックステロイドで上半身だけを鋼のようにこしらえたチキンレッグに刺青とピアスで我慢を刻みまくったパープルモヒカン、そして脂肪のプティングを初音ミクのコスプレでおおったボクがそれぞれのブースから這い出し、金切り声の主をとりかこむ。
違和感の発信源は管理人に向かってなにやらわめいていたが、
――オ客様ドウシノトラブルニ関シマシテ、当店ハ責任ヲオイカネマス。
ノイズは歯ぐきをむき出しにして、きいたこともないような権利をキンキンと列挙していたが、やがてその雑音もボクらの網にからめとられてくぐもっていき、フロアの隅のダストシューターへとはこばれて、忘れ物置き場へと落下していった。
「こんなものがあるからいけないと思うんですけどぉ」
「そうだそうだ、そいつじゃさじゃさジャサジャサうるさいぞう」
異文化のお気楽なビジターどもに〈傘のコンドーム〉と揶揄されている、束になったそのビニルの長物を、ついでに忘れ物置き場へとほうり込む。
これでボクらにとっての雨は忘れられた。
さよなら、ノイズ。
さらば、雨の日。
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