29人が本棚に入れています
本棚に追加
「それぐらい出来て当然だろ?
誠実な男の演技なんて簡単だからな。」
事も無げに武尊は言った。
お母さんとお兄ちゃんの賠償金が目当ての、
こんな男に騙されてたなんて・・・!
悔しい・・・情けない・・・。
でも今はそんな事で泣いてられない!
「ねえ・・・お金が目当てなんでしょ?
だったら東木君は助けてあげて!
東木君は貴女達の事を誰にも言わないわ!
だからお願い・・・私だけを殺して!」
私は死んでも良い!
死んで天国に行けたなら・・・。
お父さんお母さんそして・・・お兄ちゃん・・・。
三人にまた会えるから・・・。
家族四人で幸せに暮らせる・・・。
私は殺されても構わない・・・。
でも東木君まで殺させる訳にはいかない!
絶対に助けないと!
「そうね・・・。
確かに二人も殺させるのは、
武尊に気の毒な気もするわね・・・。」
根川がそう言うと、
「一人くらいは殺れよ・・・。」
呆れたように武尊が言った。
「目的地に着くまで・・・考えとくわ。」
バックミラーでこちらを確認しながら根川が言う。
「目的地って何処なの?」
東木君が窓の外を見ながら聞く。
「石盛山の中腹・・・、
永豪ヘルスセンターだった廃ホテルよ・・・。」
楽しそうに根川が言った。
最初のコメントを投稿しよう!