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川沿いの道を走り、
石盛山の九十九折の坂をしばらく登る。
途中で左折して、
木が生い茂る小道に入った。
少し走ると視界が開けてきて、
ホテルだったと言われてないと、
何だったのか判らないような、
外壁が蔦で覆われた建物が見えてきた。
当時は駐車場だったと思われる、
手前の少し開けている場所に停車した。
「着いたわ・・・二人共降りなさい。」
根川がそう言って降りて、
東木君側のドアを開ける。
私の方は武尊が開けた。
恐怖を感じて無いと言えば嘘になるが、
東木君だけは助けたい!
・・・その思いの方が強かった。
背中にナイフを突き付けられて歩かされる。
「足元に気を付けて入りなさい。
・・・転んで頭ぶつけて死んでくれても、
手間が省けて良いんだけどね・・・。」
そう言われて建物内に入らされた。
「ヘルスセンターの頃は、
動物園も併設されてたそうよ。
それが経営不振で動物園を閉鎖。
残った大浴場と宿泊施設をホテルにしたけど、
ダメだったようね。」
根川がこの建物について語る。
「詳しいんだね・・・。」
東木君が呟くように言うと、
「ネットで物件探してる時にね、
ここの歴史が載ってたのよ。」
根川がそう答えた。
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