それぞれの思惑

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もう一人(ひとり)()・・・、 荒北(あらきた)摩子(まこ)ちゃんだったかな? あの()(もら)った名刺(めいし)()いてあった。 ・・・(あと)確認(かくにん)しておこう。 (わたし)(ほう)には(よう)()いので、 「ちょっと宝陽(ほうよう)さんっ!  (たす)けて下さいよーっ!  宝陽(ほうよう)さーんっ!」 ()(すが)るように(さけ)んでる彼女(かのじょ)(こえ)を、 そのまま無視(むし)して玄関(げんかん)ホールに(はい)る。 「(ねえ)さんの()()いなんじゃ()いの?」 啓介(けいすけ)笑顔(えがお)(わたし)()いてくる。 「社長(しゃちょう)、  社内(しゃない)でそう()ぶのはお(ひか)(ねが)います。」 認知(にんち)されているとは()え、 (わたし)妾腹(めかけばら)()だ、 蔵武家(くらたけけ)人間(にんげん)では()い。 にも(かか)わらず啓介(けいすけ)(ちち)である、 将介(しょうすけ)(にい)さんは(わたし)(いもうと)()んで、 家族(かぞく)として(あつか)ってくれた。 自宅(じたく)にも(まね)いてくれて、 五歳下(ごさいした)啓介(けいすけ)()(あそ)んでいた。 血縁上(けつえんじょう)叔母(おば)にあたるのだけど、 その(ころ)から啓介(けいすけ)は、 (わたし)(ねえ)さんと()んでいる。 (わたし)啓介(けいすけ)を、 (じつ)(おとうと)のように(おも)っている。 だからこそ将介(しょうすけ)(にい)さんが夭折(ようせつ)した十年前(じゅうねんまえ)啓介(けいすけ)社長(しゃちょう)になるまで、 (わたし)蔵武建設(くらたけけんせつ)(まも)ると(ちか)った。 (ぎょ)(やす)戸繰(とぐり)社長(しゃちょう)()え、 自分(じぶん)社長秘書(しゃちょうひしょ)という立場(たちば)()き、 戸繰(とぐり)をコントロールしてきた。
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