それぞれの思惑

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憤然(ふんぜん)として(そと)()た。 「だ~か~ら~っ!  宝陽(ほうよう)さんの()()いなんですよっ!  そこ(とお)して(くだ)さいって()ってるんですっ!」 「じゃあ(なん)宝陽(ほうよう)女史(じょし)は、  (きみ)(こえ)()けないで、  社内(しゃない)(はい)って()ったんですかね?  それって(へん)だよね~?」 「全然(ぜんぜん)(へん)じゃ()いですよっ!  社長(しゃちょう)さんが(そば)()たからですよっ!」 ・・・まだ()めてやがるっ! (わたし)気付(きづ)いたガキはニマーッと(わら)い、 「ほら~っ!ほらほらほらほらあっ!  ()てくれたでしょっ!  (わたし)()った(とお)()()いなのっ!  (わか)った~っ?」 警備員達(けいびいんたち)()(ほこ)るかのように、 はしゃぎながら()うガキ。 警備員(けいびいん)一人(ひとり)(わたし)(そば)()()う。 「すみませんこのガ・・・、  この(かた)(さわ)るとセクハラで(うった)えるとか、  法律(ほうりつ)でどうのこうのとか色々(いろいろ)()ってまして、  我々(われわれ)ではちょっと()()えません。」 ほとほと(こま)った様子(ようす)(わたし)()う。 「(わか)りました。  (あと)(わたくし)応対(おうたい)しますので、  ()()(もど)って(いただ)いて結構(けっこう)です。」 「ではおまかせ(いた)します。」 そう()って敬礼(けいれい)をして、 ()()(もど)って()警備員達(けいびいんたち)。 その警備員達(けいびいんたち)背中(せなか)見送(みおく)り、 ガキの(ほう)()(なお)ると。 「どうも~!お(ひさ)しぶりで~す!」 そこには、 背中(せなか)(すこ)(まる)めながら愛想笑(あいそわら)いを()かべ、 ()()をするという商人(しょうにん)基本動作(きほんどうさ)を、 忠実(ちゅうじつ)再現(さいげん)しているガキがいた。
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