それぞれの思惑

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「アンタ(だれ)?」 (かお)(かろ)うじて(おぼ)えている程度(ていど)なのに、 名前(なまえ)など(おぼ)えているはずも()い。 「(いや)だなぁ~!  九条(くじょう)ですよ、九条(くじょう)詩夜璃(しより)です!  ほら戸繰(とぐり)社長(しゃちょう)佐倉(さくら)小夜(さよ)さんの事件(じけん)(とき)、  小夜(さよ)さんの(となり)(すわ)ってたでしょ?」 それは(おぼ)えているが、 あの(とき)一言(ひとこと)くらいしか言葉(ことば)()わしてない。 その程度(ていど)なのに自分(じぶん)(こと)を、 (おぼ)えて(もら)えてると(おも)ってるのこのガキ? 「どちらも現在(げんざい)我社(わがしゃ)無関係(むかんけい)ですが?」 「()いんです!()いんです!  あの二人(ふたり)には(よう)()いんで~。」 「(わたし)もアンタに(よう)()いんだけど?」 「それはそうですよ~!  (わたし)宝陽(ほうよう)さんに(よう)()るんですから~!」 ニコニコしながらそう()九条(くじょう)とか()うガキに、 (わたし)のイライラが()まんない。 「(わたし)(なん)(よう)なの?」 「ちょっとしたお(ねが)いなんですけど~。  (ひと)紹介(しょうかい)して()しいんですよ~。」 「(だれ)を?」 「牙龍会(がりゅうかい)望月(もちづき)さんなんです。」 「望月(もちづき)・・・?  アンタああいうシブイ(けい)(この)みなの?」 「そんなに趣味悪(しゅみわる)()いですよ~!」 こっ・・・、このガキぃぃいっ! イライラがMAX(マックス)ゲージを()()って、 殺意(さつい)という衝動(しょうどう)変化(へんか)する。 喉突(のどづ)きを()らわせて(かみ)()(つか)んで、 足払(あしばら)いを()けて(ころ)ばせて()()(まわ)してやるっ! ・・・正面玄関(しょうめんげんかん)でなければそうしていた。 それを理由(りゆう)(わたし)理性(りせい)が、 (わたし)殺意(さつい)(おさ)()んでいた。
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