一章

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精霊──それは自然を操れる存在で人々からは神として崇められてきた。 そんな精霊は意思が弱いものが多く、悪人に利用されることも少なくない。 自然を操れる精霊に対し、人為的に卑金属を貴金属に変えることが出来る魔法が存在する。 錬金術だ。 錬金術は卑金属を貴金属に変えるだけなのであまり戦闘向きではない。それ故、人気も決して高くない。 この世界は魔法がすべての頂点になる。だが、生まれたてで魔力を持っている子供はほとんどいない。 もし、生まれたてで魔力を持っている子供がいたとすれば、その子供は将来有能な魔法士か、魔法騎士になるだろう。 しかし、生まれたてで魔力がある子供などは100万人に1人と言われている。 この国では、すべての事を神が管理していると思われている。だが、実はそうではない。いや、神が管理しているといえばそうなるが、実際、神は自分でも管理しているが、100年に一度中学校の卒業式から、高等学校の入学式までの間に1人の人間を選び、その人間に管理の手伝いをさせる。手伝いをさせると言っても、ほとんど雑務に使うことが多い。そのため、選ばれた人間もそこまで忙しくはならない。だから、自分で言わない限りはほかの人には選ばれた人間だとばれなくてすむのだ。 それに、神は相性の良い人間を選ぶ…………だが、最悪の相性の二人がここにいた。 「ったく。早く終わらせて勝負しようぜ。」 「勝負しようぜって…………これ、誰の仕事か分かってる? 雑用は君のような人間がすることだろ。それなのに、何で僕が……」 愚痴をこぼしながらもきちんと仕事をこなしているのは、この世界でいうところの神だ。その名もグラード。 そして、グラードに勝負を急かしているのは、神に選ばれた人間。 稲森伸吾。 こんな対照的な二人が一緒になったのは不思議だが、逆に、性格が似すぎている二人がここにいる。 「この仕事は終わりましたでしょうか?」 「はい。その仕事はもうすでに出来上がっております。」 「あの、ですから、私ごときに敬語は使わないでもらえますか?」 「それなら、相馬一滋君も僕には敬語を使わないでください。」 「それは無理な事ですね。選ばれた人間である私が神であるあなたに敬語を使わないなど有り得ない。」 相馬一滋と言う名前の男子に強く言われた神…………ジード。 この二人は似ているような似ていないような感じがする。 騒がしい日々が続きそうだ。
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