一章

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「よし。行くぞ!!」 相馬の造ったゴーレムは生徒の炎よって、溶かされそうになるが、 稲森が張った水の膜が盾になっており、ゴーレムの周囲は水蒸気 の影響で蒸し暑くなっていた。 「おい。大丈夫か?もう水の膜が無くなるぞ?」 どんどん水蒸気に変えられていく水の膜に対して不安に思ったのか、稲森が聞いてくる。 「ああ。大丈夫だよ。秘策もあるしな。」 相馬は自信に満ち溢れた顔で返答した。 「何だよ秘策って……。俺がやることはあるか?」 「いや、今のところはお前の力は必要ない。それに、魔力ももう残って無いだろ?」 「そうだが、それはお前にも言えることだろう。」 そんな戦闘中とは思えない会話をしながら相馬は魔法を発動させるための準備に入る。 相馬が準備を始めると同時にゴーレムに張ってあった水の膜が弾けた。 「もう耐えきれないか……。おい。相馬…………」 稲森が相馬を呼ぶ声が聞こえる頃には、火の玉が目の前まで迫っていた。 そして着弾する。鳴り響く爆発音。辺り一帯が煙で覆われた。稲森は炎が収まった場所を見た。しかし、そこには相馬はいなかった。 「相馬……。相馬。どこだよ。」 稲森は諦めた様な目をして周りを見渡した。だが、周りは未だに煙で覆われている。 「ここだよ。どんだけ必死に俺の事を探してるんだよ。嫌いじゃなかったのかよ。」 稲森は声がする方向を見た。 そこには、全身が鉄で覆われた宙に浮いている相馬がいた。 「心配なんかしてねーよ。馬鹿野郎。お前が死んだら、ジードがまた新しい人間を選ばないといけないだろ。それに、俺の対戦相手が死ぬのは困る。」 「結局はそれかよ。お前は本当に神想いだな。神の前では真面目なふりをしてるのにな。まぁいい。俺はコイツを倒す。よーく見てな。世界最強の強さを。」 そう言いながら、相馬は鉄を生成する。ゴーレムの3、4倍程の巨大な鉄の塊にまた別の魔法をかける。 「これで終わりだッッ!」 巨大な鉄の塊が信じられない程の早さで落ちていく。 最大の重力魔法をかけたのだろう。目では追いつけない程の速さで生徒に向かって落ちていく。 生徒に鉄の塊がぶつけられる。鉄の塊によって、周りの地面がえぐられる。大地が揺れる。意識が朦朧とする。 「ちょっとは……出来るみたいだな。」 相馬は意識が朦朧とする中で、生徒の本音が聞けた気がした。
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