一章

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「それで、これからの課題だけど……」 「花井が自分の魔力の制御を出来るようにすれば良いんですよね?」 グラードが歯切れ悪そうにいうのに待ちきれなくなったのか、稲森が先に言った。しかし、まだグラードは歯切れ悪そうに言う。 「その魔力を制御する練習の手伝いというか、先生になって指導して貰いたいんだけど…………」 「それはまさかとは思いますが、私に先生になれと?」 「ああ。悪いんだけど、頼めるかな?」 「ええ。良いですよ。と言うか、そうする以外の道はないのでしょう?」 「はは。まぁね。それじゃ、稲森君。頼むよ。」 「はい。了解しました。では、どの場所で練習させればよろしいのでしょうか?」 「それなら、この場所を使うと良いよ。君もここでなら、思う存分魔力を開放出来るだろう?でも、少しは抑えてくれよ?」 グラードは顔を少し引きつらせながらそう言うと、ジードと共に帰っていく。相馬もジードとグラードについて行こうとするが、稲森に呼び止められる。 「おい相馬。何逃げようとしてるんだ?お前は受け役だぞ?ちゃんとしろよ。」 「だってよ、この場所って俺はあんまり好きじゃないんだよ。嫌な思い出ばっかりじゃねーかよ。」 「そう文句ばっかり言うな。俺だってこの場所はあんまり好きじゃない。神の命令だから仕方なくやっているのだ。それに、この場所は俺達が成長してきた場所だろ。良いじゃねーか。あの頃の気持ちに戻っても。」 「うるせー。あの頃は毎日が地獄だったよ。だから嫌いなんだ。」 この場所とは、相馬と稲森が神に選ばれた当初、ジードとグラードに鍛えられた場所なのだ。神に選ばれても、所詮、まだ高校生にもなっていなかった相馬と稲森が神であるジードとグラードに勝てるはずないのだが、負けず嫌いの二人は毎日、ボコボコにされては挑戦し、またボコボコにされるという生活を送った場所なのだ。 いつまでも口喧嘩をしている二人に痺れを切らしたのか、花井が、 挑発気味に稲森に話しかける 「おいおい。いつになったら練習させてくれるんだよ。お前らがやったやつでも良いからやらせろよ。」 「お前もうるせぇよ。地獄の練習をさせてやるよ。」 こうして、花井の魔力操作の練習が始まったのだった。
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