一章

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「ウぁァァぁぁ。」 「またか。はぁ……。」 この数時間、相馬と稲森は何度ため息をついたかわからない。  一つ、確実に言えるのは、何度も花井があのときのように暴走しているということだ。暴走するたびに相馬と稲森は魔力を解放しているのだ。 花井の魔力が桁違いに多いとしても、何度も暴走して、周りに魔力をふりまいていればいつかは魔力切れが起きる。 魔力は一度空になると、回復するまで時間がかかる。 そのため、相馬と稲森、花井は時々休憩を挟んでいた。 「ふぅ。やっぱりこの場所は嫌いだけどいいところもあるな。魔力が回復しやすいしな。」 「ああ。神の加護が付いているかららしいな。修行をするならもってこいの場所だろ。」 相馬のつぶやきに稲森が答える。二人の会話に花井が割り込んでくる。 「え?そうなのか?道理で倒れない訳だ。普通なら魔力が少なくなればなるほどめまいや息切れ、頭痛がするはずだよな。それがないから不思議に思ってたんだよ。 でも、おまえらを選んだ神は凄いな。えっと…………ジードとグラード、だっけ?」 「凄いと思うなら、ジードとグラードの名前ぐらい覚えろよ……。」 そんなどうでも良いような会話をしながらその日の練習は幕を閉じた。 ______________________________ 次の日の朝。 花井は相馬と稲森に起こされた。 今日は神の下で過ごす初めての朝だ。 花井は何をするかは大体予想できていた。 「わかってるかも知れないが、今日は練習の前に神の仕事の雑務をしてもらおうと思う。」 「そして、一番最初にやってもらうのは、神の周りにある魔道具に魔力の補充をしてもらうことだ。俺たちがやると、何度も休憩を挟まないと満タンには出来ないからな。おまえの魔力量があれば休憩は挟まなくても大丈夫だろうしな。」 「じゃあ、後はジードとグラードに聞いてくれ。」 そう言って、頑張ってくれ、とでもいっているように手を振ってどこかへ行ってしまう相馬と稲森。 やっぱり相馬と稲森は適当だな。などという思いを抱きながら 花井は神…………ジードとグラードの下へと向かうのだった。
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