Can you celebrate?

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「ここか……」  ナビが示した目的地は、閑静な住宅街にあるシンプルモダンな一軒家だった。表札には「榛名」と出ている。一家四人が住むには十分すぎるくらいの広さがありそうだ。外玄関にも一階にも二階にも明かりがついている。 「すこし先にコインパーキングがあります」 「わかった」  玄関脇に駐めようかとも考えたが、すぐに終わるとは限らないので路上駐車は避けたほうがいいだろう。教えてもらった数百メートル先のコインパーキングに駐めて、一緒に徒歩で戻った。  玄関前に着くと、ハルナは緊張ぎみに鍵を開けてそろりと中に入り、千尋も促されるまま足を踏み入れて丁寧に扉を閉めた。それでもガチャリと結構な音がしてしまったが、誰かが出てくる気配はない。 「すこし待っててくださいね」  彼女は声をひそめてそう言い置き、靴を脱いで一階のリビングと思われる部屋に入っていった。  まもなく女性のヒステリックな怒号が聞こえてきた。ハルナの声ではないのでおそらく母親だろう。彼女が話していたとおりの人物像だなと考えていると、バンと叩きつけるように扉が開いた。  出てきたのは、黒縁眼鏡をかけているがっちりとした体格の中年男性だった。こちらは父親に違いない。眉をひそめつつ探るようなまなざしで千尋を見たかと思うと、ハッと息をのむ。 「おまえは……」 「誘拐犯の遠野千尋です」  千尋は表情を変えることなく冷静にそう応じて、頭を下げる。  父親はすさまじい形相でこぶしを振り上げかけたものの、奥歯を食いしばってどうにかこらえた。そして気持ちを落ち着けるようにゆっくりと呼吸をして、挑発的に口の端をつり上げる。 「いいだろう、何の話か知らんが上がりたまえ」  そう告げると、ついてこいとばかりに視線を流しながら身を翻して、リビングへ戻っていく。いつのまにか不安そうに廊下に佇んでいたハルナを、すれ違いざまに冷たく一瞥して。
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