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しかし、私たちが住んでいた町はそこそこな都市だったから、みんなどこかでこれも中学校に上がるまでだと思っていた。中学校に上がれば人数がばっと増えるし、男子もいろいろな子がいるだろうから、今までのように全男子をとられるなんてことはあるまいと思っていた。
実際、小学校ほど酷くはなかった。
彼女の気品は崩れなかったが、それどころかますます美しくなっていったが、全員が全員彼女を好きなわけではなかった。というより、皆現実を見始めたようだった。
その中学がそこまで勉強に厳しくないというのもあって、小学校の同級生たちはぽつりぽつりとボーイフレンドをつくっていった。あの飛鳥ちゃんは同じクラスの山中君やテニス部の部長の森下先輩なんかとお付き合いしたらしい。
私はそんな中でもボーイフレンドどころか男友達さえもできず、新しく出来た友人たちとともに過ごす日々だった。
彼女はというと、やはりここでも非常にモテていた。小学校ほどではないといってもそれはあくまで好きな人とそうでない人との人数比のことで、単純な人数でいったら小学校時代とそう変わらないどころかそれより多かったかもしれない。
そんな彼女だったが、浮いた話は一つもなかった。どうやら高校はもっと都心に近い名門私立に行くつもりらしく、日々勉学に励んでいたそうだ。なんでも放課後は習い事で勉強の時間がほとんどとれないため全部を学校でやっているということらしい。
そのことを聞いて何人の女生徒がほっと胸を撫で下ろしたことだろうか。やっと、やっと離れられる。そう思ったに違いなかった。
放課後図書室で勉強する彼女を見かけると、精一杯の願いを込めて勉強頑張ってと飴玉を差し入れる女子もちらほら出てきた。
時折その声かけの声はしたが、彼女がいるときの図書室のなんと静かだったことか。中心となって彼女の勉強を応援していたのはやはり同じ小学校出身の子たちだった。
3年になると女子たちはようやく安心してボーイフレンドとデートしたり、学校で気にせずおしゃべりすることができるようになった。もちろんみんな高校受験はするが、ほとんどの生徒は学校の勉強をある程度していれば入れる近くの公立高校に進学するつもりだった。他に同じ学校から彼女の目指す水白宮に行くのは聞いた子だとガリ勉の西浦ぐらいだっただろう。
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