第一章 砂漠の一家

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     3    五人家族の食事は質素だが品数が多い。  今日、街まで羊を売りに行った帰りに色々と食料を仕入れてきたらしい。スパイシーな料理が目立つが、主食は米で自分と同じ文化圏みたいだ。  無国籍風の大きな長方形の食卓は脚が短く、椅子を使わずに直接、床に座して食べるようになっている。  最初に出会った時、華僑の人達かと思ったのだが、名前や食事内容から考えて、どうも違う民族なのかもしれない。 「今日は皆で遠出だったから、あり合わせの物しかないのよ、それでよかったらどうぞ……」  綺麗な奥さんは優しそうに微笑みながら、僕に大きなスプーンを渡してくれた。この家では、テーブルに家族が全員揃ってから食事をするしきたりになっているらしい。  奥さんの横に子供二人が押し合いながら座り、僕を興味深そうに見つめている。確か兄の方がドンハ、妹がヘイスーとかいったかな。共に七歳前後の元気な子供達だ。賑やかだが躾が行き届いており、客の前では粗相をしないような印象を受ける。二人共、何ともほほえましく明るい性格だ。   ヘイスーが、とうとう我慢できなくなって僕に質問してきた。     
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