10人が本棚に入れています
本棚に追加
「お兄ちゃんはトモローっていう名前なの? そして、どこから来たの?」
横にいたドンハも身を乗り出して訊いてきた。
「いつまでここにいるの? お兄ちゃんの家族や仲間達は今どうしてるの?」
単純だが的確な質問を次々と浴びせかけてくる。これには少し困った。自分の記憶も曖昧なのに、どう自分の中で整理して答えていけばよいのだろう。
僕が困った顔をしていると、父親のユンソンが子供達を諭した。
「こらこら、トモロー兄ちゃんは何か訳があって今、色々と答えられないのだよ。思い出すまでそっとしておいてやりな」
僕が申し訳なさそうに頷くと子供達は残念そうな顔をした。
このままでは失礼だと思ったので、僕は身の周りのことなど、思い出せる限りの情報をこの家族の前で喋った。そうでもしないとせっかくの好意を踏みにじってしまう気がしたからだ。
背後に何か人の気配を感じたので振り向くと、そこに長女のミナが立っていた。
一瞬、僕は目を見張った。
風呂から出てきたばかりのミナは、まだ濡れた黒髪をタオルで拭きながらテーブルの上に並んだ料理を気にしていた。
最初のコメントを投稿しよう!