10人が本棚に入れています
本棚に追加
どれほど時間が経ったのだろう……まるで分からない。
気が付くと視界は元に戻っていた。目の痛みが治まらなかったので、両眼のコンタクトレンズを外し、持っていた赤いケースの中に一枚ずつ何とか収めた。汚れたままの手だったが、この際仕方がない。すると気分が随分と楽になり、幸いなことに見え方もそれほど変わらなかった。
砂漠の乾燥地帯に何度も臥していると、本当に自分がミイラにでもなってしまいそうな恐怖感がある。でも今は体温が上昇し、思考がぼんやりとしてきている。
「こんな所で死にたくないなあ……せめて砂漠でなく、人のいる所で……」
カラカラになった唇からは呻きに近い絶望の言葉がこぼれ出した。
今ここがどこなのか、自分が何者なのか、はっきりしないまま最期を迎える人生ほど不幸な現実はないだろう。なぜこのような状況に陥り死にそうになっているのか、誰でもいいから教えて欲しかった。
最初のコメントを投稿しよう!